プロ野球選手の引退後について、ネット上では「過去の貯蓄や知名度があるため、再就職に困ることはない」という安易な見方がされることがあります。しかし、伊藤義弘氏が歩んだ道は、そうした甘い憶測とは対極にある過酷な現実でした。
第一の誤解は、「元プロなら簡単にスポーツジム経営や解説業で暮らせる」というものです。実際には解説者の席はごく一握りであり、民間ジム運営も厳しい競争に晒されます。伊藤氏が選んだのは、知名度が一切通用しない医療従事者としての国家資格取得でした。
第二の盲点は、30代半ばで10代・20代の若者たちと机を並べ、朝から夕方まで解剖学や生理学、運動学を学び直すハードルの高さです。膨大な暗記量と臨床実習のプレッシャーに追われる中、家計の管理や子育てを一手に引き受け、伊藤氏が勉強に専念できる環境を作り上げた妻のサポート力は計り知れません。