パンくんを語る上で欠かすことができないのが、志村けんとパンくんの魂の絆です。日本テレビ系『天才!志村どうぶつ園』で始まった二人の関係は、単なる番組の企画やタレントとタレント動物の枠組みを遥かに超えていました。
ロケの合間、志村さんは決してパンくんを道具として扱わず、一人の繊細な子どもとして接していました。移動中に眠くなれば自らの膝枕で寝かせ、パンくんが恐怖を感じた時には全身で抱きしめて安心させる。パンくんもまた、日本中を探しても志村さんにしか見せない特有の甘えた表情と全幅の信頼を寄せていました。また、いつも隣に寄り添っていた相棒のブルドッグ・ジェームズ(2016年3月に12歳で永眠)とのユーモラスな珍道中は、昭和から平成へと続く家族向けバラエティの金字塔となりました。
2012年の襲撃事件後、テレビ出演が不可能になり、人と直接触れ合えない「間接飼育」へと移行した後も、志村さんの愛情は微塵も揺らぎませんでした。志村さんはプライベートや特番の収録で何度も阿蘇を訪れ、頑丈な強化ガラス越しにパンくんと対面しました。
ガラスの向こうに志村さんの姿を認めた瞬間、パンくんは興奮して窓辺に駆け寄り、ガラスにぴったりと自分の手を重ね合わせました。志村さんもまた、自らの手のひらを重ね、目を潤ませながら「元気か」「大きくなったな」と語りかける光景は、多くの視聴者の涙を誘いました。2026年3月29日、志村さんが新型コロナウイルス感染症により急逝した際、カドリー・ドミニオンの献花台にはパンくんの健康と志村さんへの感謝を捧げるファンが全国から列をなしました。言葉を持たない動物と人間が築き上げた至高の信頼は、今も阿蘇の地に静かに息づいています。