川島なお美さんが旅立った直後、世間の注目を集めたのが、彼女が夫・鎧塚俊彦氏に向けて遺した「遺言」の存在でした。生前、自らの死期を悟った彼女は、夫への深い愛情と感謝を綴った手紙を手元に残していました。
その手紙には、次のような言葉が記されていました。
「できれば再婚しないでね。でも、もしどうしても一緒になりたい人が現れたら、私の写真をちゃんと飾って、その人にも私のことを話してね」
「一緒のお墓に入りたいから、私の隣を空けておいてください」
一見すると独占欲のようにも受け取れるこの言葉ですが、関係者や鎧塚氏の証言を辿ると、その根底には夫婦にしか理解し得ない絶対的な信頼と、女性としての剥き出しの純愛が存在していました。2009年に結婚した二人は、世間から「セレブ婚」と羨望の眼差しを向けられる一方、互いの人生の暗雲を共に乗り越えてきた戦友でもありました。
結婚から間もない2012年、鎧塚氏は左目の視力をほぼ失う「網膜中心静脈閉塞症」を発症。パティシエとしての生命線を脅かされる絶望の中、川島さんは全国の名医を探し回り、献身的に夫の治療とリハビリを支えました。夫を支える妻としての責任を果たした彼女が、自らの命の終わりを前にしたとき、鎧塚氏に対して見せた唯一の「甘え」と「本音」が、あの手紙の言葉だったのです。
鎧塚氏は後年の特番インタビューや手記において、「あの手紙を読んだとき、なお美の純粋さと、僕に対する深い愛情に涙が止まりませんでした。『再婚しないで』という言葉は束縛ではなく、彼女が命がけで僕を愛してくれた証そのものです」と語っています。形骸化した契約ではない、魂と魂が結びついた夫婦の真実がそこにありました。