サッカーファンの熱い視線が注がれる2026年ワールドカップの開催地は、アメリカ、カナダ、メキシコの北中米3カ国です。3カ国による共同開催は大会100年近い歴史のなかで史上初であり、メキシコにとっては1970年、1986年に続く史上最多3度目の自国開催という偉業となります。
この異例ともいえる広域共催が選ばれた最大の要因は、FIFAが推し進めた「出場国数の32カ国から48カ国への大幅拡大」にあります。試合数は従来の64試合から一気に104試合へと跳ね上がり、大会期間も約40日間に長期化しました。これほどのマンモスイベントを1カ国だけで支えることは、インフラ整備費、警備コスト、宿泊収容能力のあらゆる面で財政破綻のリスクを孕んでいます。
事実、FIFAが公表した入札評価レポートによると、北中米3カ国による「ユナイテッド招致案」は、NFL(米プロフットボールリーグ)をはじめとする世界最高峰の既存大型スタジアムをそのまま転用できる点が決定打となりました。新設スタジアムの建設をほぼ必要とせず、試算された大会チケット収入や商業収益は140億ドル(約2兆円)超という天文学的数字に達しています。巨額の赤字遺産に苦しむ近年の五輪やメガスポーツ大会の教訓を踏まえ、既存インフラの徹底活用による「確実な黒字化」こそが、3カ国共催を選び取った最大の力学です。
会場スタジアムの顔ぶれも圧倒的です。開幕戦の舞台となるメキシコシティの聖地「エスタディオ・アステカ」(収容人数約8万7000人)から、決勝戦の地に指定されたニューヨーク/ニュージャージーの「メットライフ・スタジアム」(同8万2500人超)、さらには最新鋭の開閉式ドームを備えるダラスの「AT&Tスタジアム」まで、全16都市に配された劇場のスケールは過去のどの大会をも凌駕しています。