実際に企業の現場で決済権を持つ管理職や経営陣は、こうした宛名の誤用をどのように受け止めているのでしょうか。大手総合商社の人事総務担当者やメガベンチャーの役員層を対象としたヒアリング取材からは、メール1通から透けて見える書き手の姿勢に対するシビアな視線が浮かび上がります。
東証プライム上場企業の50代役員は、取材に対して次のように胸中を明かしています。
「社外の若い営業担当者から『〇〇取締役様』というメールを受け取ることがありますが、率直に言って『社内教育が十分に行き届いていない企業なのだな』という印象を持ちます。失礼だと怒鳴り込むことはありませんが、商談の重要局面で細かい契約実務を任せられるかという点において、無意識の不安要素になり得ます」
SNSやビジネス系知恵袋などのコミュニティを検証しても、「部下が取引先に『社長様』とメールを送っていて血の気が引いた」「丁寧にしたつもりで『〇〇部長様』と書いて恥をかいた」という生々しい失敗談が多数報告されています。受け手側はわざわざ間違いを指摘してくれないケースが多いため、「指摘されないまま信頼値が削られている」という点にこそ、この問題の根深い恐ろしさがあります。