指名手配に関する情報には、ドラマや映画の影響による誤解や、法改正前の古い認識がネット上に放置されているケースが少なくありません。逃亡と捜査を巡る決定的な3つの盲点を整理します。
第一の誤解は「逃げ続ければいつか時効が成立する」という思い込みです。2010年(平成22年)の刑事訴訟法改正により、人を死亡させた罪で最高刑が死刑に当たる殺人罪や強盗殺人罪などの公訴時効は完全に廃止されました。法律が改正された時点で時効が完成していなかった過去の未解決事件にも遡及適用されたため、凶悪犯に対して捜査の手が緩む期限は一生涯存在しません。逃亡者は死ぬまで警察と市民の視線から逃げ続けることしかできない構造になっています。
第二の誤解は「整形手術を受ければ完全に別人になれる」という幻想です。過去には大掛かりな整形手術を繰り返して逃亡を図った福田和子元受刑者や市橋達也受刑者の例が知られていますが、現代の美容医療機関では初診時の身元確認および公的身分証の提示が厳正に義務付けられています。無免許の闇医者や自己流の外科的処置を行えば重篤な感染症や後遺症のリスクを抱えることになり、指紋、骨格、耳介(耳の軟骨構造)、声紋といった生体特徴まで改ざんすることは不可能です。
第三の誤解は「通報すれば誰でも簡単に数百万円が手に入る」という認識です。警察庁の報奨金支払条件は厳格であり、提供された情報が直接逮捕に結びついたかどうかを検察・警察の合同審査会が厳正に評価します。単に「街で見かけた気がする」という漠然とした連絡だけでは報奨金の対象にはならず、具体的な所在地の特定や行動パターンの合致といった決定打が必要です。