教科書の改訂から20年以上が経過した現在、学校現場や入試問題ではどのような扱いになっているのでしょうか。大手進学塾の社会科講師や高校入試の過去問を検証すると、意外な実態が浮かび上がってきます。
かつての入試では「708年に造られた日本最古の貨幣の名称を答えよ」という一問一答が頻出でした。しかし現代の高校入試での出題傾向において、このような単純暗記型の設問はほぼ姿を消しました。現在の標準的な出題パターンは、資料文や年表と絡めた以下のような形式です。
【近年の典型的な出題例と問われ方】
・「下線部に関して、天武天皇の時代に造られたとされる[ 空欄 ]の写真を資料から選べ」(正解:富本銭の写真)
・「和同開珎と富本銭に関する記述として正しいものを次から1つ選べ」
(選択肢例:富本銭は全国に広く流通した/和同開珎の発行に伴い蓄銭叙位令が出された 等)
教育現場の教員へのヒアリングによると、「生徒から『先生、結局どれが一番古い貨幣として覚えればいいんですか?』という質問を毎年受ける」といいます。単純明快な答えを求める中学生に対し、入試問題の作問者は「何をもって最古とするか」の定義の曖昧さを熟知しているため、不用意に「日本最古の貨幣=富本銭」と単体で答えさせる問題を避ける傾向にあるのです。
特に難関私立高校や大学入学共通テストでは、「実質価値を持つ金属塊としての無文銀銭」「国家が価値を定めた銅銭としての富本銭」「律令体制下の流通網に乗った和同開珎」という、歴史的機能のグラデーションを理解しているかが合否を分ける分水嶺となっています。