70年代末から80年代にかけて、日本のエンタメ界に地殻変動を起こしたのが角川春樹事務所だ。大規模なメディアミックス戦略を展開し、出版と映像を直結させた大ヒット作を連発。その中心にあった角川映画という巨大なムーブメントの中で、作家・片岡義男の持つクールで乾いた短編小説群は、当時の若者カルチャーにおけるバイブルとして絶大な支持を集めていた。
この独特な文体をスクリーンへと移植する大役を担ったのが、日活ロマンポルノなどで青春の哀愁を描き続けてきた鬼才・藤田敏八監督だ。湿り気のあるドラマを得意とする藤田監督と、片岡義男が描くアメリカンで乾いた都市の空気感。一見すると相反する二つの才能が激しく衝突したことで、従来の邦画にはなかった稀有な手触りが生まれた。本作はまさに、日本の青春映画の歴史に不可逆な足跡を残した傑作である。