ネット上には耳のトラブルに関する民間療法や不正確な応急手当の情報が氾濫していますが、鼓膜損傷において誤った初動処置をとることは、取り返しのつかない重篤な感染症を招く主因となります。現場で最も多く目にする誤解と、医学的に正しい鼓膜破裂の応急処置を整理します。
絶対にやってはならない最大のNG行動は、出血や不快感を洗い流そうとして耳の中に水道水や市販の目薬・消毒液を注ぎ込むことです。通常、鼓膜は外耳道と無菌状態であるべき中耳腔を隔てる強固なバリアとして機能しています。しかし、穴が開いている状態で液体を流し込むと、外耳道内の常在菌や雑菌が中耳腔へと一気に侵入し、激しい化膿性中耳炎を誘発します。同様に、点耳薬も医師が穿孔の存在を前提に処方した専用薬剤以外、市販の抗炎症点耳薬などを自己判断で使用してはなりません。
もう一つの危険な盲点が「強く鼻をかむ行為」です。鼻腔と中耳は耳管という細い管でつながっています。鼓膜に穴が開いた状態で力任せに鼻をかむと、鼻腔内の病原菌を含んだ粘液が耳管経由で中耳へ逆流し、鼓膜の再生を著しく阻害します。
受傷直後に行うべき唯一かつ最善の応急手当は、「触らず、濡らさず、清潔に保護する」という極めてシンプルな原則に尽きます。耳だれや少量の血液が垂れてくる場合の耳だれの対処法としては、耳の穴の奥へ綿棒やティッシュをねじ込むのではなく、清潔なガーゼや丸めたコットンを耳の入口(耳介付近)に軽く当て、医療用テープで留めて外からの水気やゴミを遮断してください。入浴時もシャワーが耳穴に直接当たらないようワセリンを塗ったコットンで塞ぐなどの厳重な配慮が求められます。