消費者を惑わす意図が透けて見える表記であるならば、法律上のペナルティは発生しないのかという疑問が浮かびます。結論から言えば、現行の原産国表示ルールにおいて、「Made in PRC」という記載自体が直ちに景品表示法違反(不当表示)に問われるケースは極めて稀です。
不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)第5条第3号に基づく「商品の原産国に関する不当な表示」の運用基準、および消費者庁ガイドラインでは、原産国の表示義務について詳細な基準を定めています。原則として「原産国を偽る表示(国産と誤認させるなど)」は厳罰の対象となりますが、正式な国名表示としては以下のような規定が敷かれています。
原産国名の表示は、日本語で「中国」または「中華人民共和国」と書くことが推奨されるものの、外国語表記においては国際的に通用している英文国名や慣習的な略称も許容範囲とみなされています。国際標準化機構(ISO)が定める国名コード(ISO 3166-1)においても、中国の3文字コードは「CHN」、2文字コードは「CN」と規定されていますが、外交や通商上「PRC」の呼称は広く認知されているため、法的な「虚偽表示」や原産地偽装の真相に抵触する違法行為とは断定できません。
ただし、アパレル製品に義務付けられている家庭用品品質表示法の枠組みでは、より厳格な解釈が議論の俎上に載せられています。経済産業省および消費者庁が示す繊維製品の表示実務指針では、原産国表記は「一般消費者が容易に識別できる日本語で明確に表示すること」が基本原則として指導されています。現在、大手百貨店や良識ある国内SPAブランドの多くが、洋服タグに「Made in PRC」と英語で印字しつつも、日本語表記ラベル側に「原産国:中国」と並記しているのは、指導基準を遵守しコンプライアンスリスクを回避するための防衛策です。