冷たい冬の静寂がほどけ、微かな陽だまりに胸が弾む。この感覚を言語化しようとするとき、私たちが無意識に選ぶ音には明らかな法則がある。言語音の響きが心理に与える影響については、国立国語研究所をはじめとする言語学の領域でも長年議論されてきたが、とりわけ春を表す言葉には、跳ねるような破裂音や柔らかな母音の重なりが目立つ。
「ぽかぽか」「うららか」「かすみ」。口ずさむだけで表情が自然とほころぶような音韻構造が、日本人の感性に深く根ざしている。出版・メディア業界においても、近年は古典的なレトリックをそのまま用いるのではなく、現代的な生活感覚に寄り添った「語感の愛おしさ」を前面に押し出す特集が目立つようになった。情報があふれかえる現代だからこそ、一瞬で体温を感じさせるような温もりのあるフレーズが求められているのだ。