ネット上や動画プラットフォームでは、時として「時短裏ワザ」と称して科学的根拠を欠くメイク手法が拡散されることがある。皮膚科医やコスメ処方開発者が一様に警鐘を鳴らす2大誤解を是正しておきたい。
誤解1:「日焼け止めとリキッドファンデーションを手の甲で混ぜて塗る」
朝の時間を短縮するために日焼け止めと下地、あるいはファンデーションを手のひらで混ぜ合わせる手法を推奨する投稿が見受けられる。しかし、これは絶対に避けるべき悪手だ。化粧品は個別の乳化システム(油中水型、水中油型など)に基づいて緻密に界面活性剤の比率が設計されている。別個の製剤を物理的に混ぜると乳化状態が破壊され、日焼け止めのUVブロック粒子が凝集してしまう。結果として肌上に塗布した際にミクロの穴が空き、紫外線が素肌へ直接透過することになる。
誤解2:「SPF50の化粧下地を使っているから、日焼け止めは不要」
「SPF50+ / PA++++のトーンアップ下地を塗っているから日焼け止めを省いている」という声も根強い。しかし、日本化粧品工業連合会が定める測定基準において、SPF値通りの効果を得るには皮膚1平方センチメートルあたり2mgという十分な塗布量が前提となる。これは顔全体に換算すると約0.8g〜1.0g(500円玉大相当)に達する。顔料を含む化粧下地をこの量まで塗り重ねると、過剰な白浮きや深刻な厚塗り感、即座の化粧崩れを招いてしまう。下地はあくまで適量(パール粒大程度)に抑え、事前の日焼け止めで無色の防御層を仕込んでおくことが不可欠なのだ。