「代表のユニフォームを脱いだ翌朝、鏡の前に立ったとき、自分が何者でもなくなったような強烈な孤独感に襲われました」。そう静かに語り始めたのは、元キャプテンとしてチームの土台を築き上げた廣瀬俊朗氏だ。ピッチ上で見せる毅然とした司令塔の顔とは対照的に、現役引退直後の心境は混迷を極めていたという。世間が熱狂に沸き立つ陰で、重なる怪我との孤軍奮闘や重圧による睡眠障害など、ファンには決して見せない知られざる苦悩が存在していた。
しかし、彼は立ち止まらなかった。ビジネススクールで経営学を学び直すと同時に自らの会社を設立。社会起業家としてスポーツの価値を社会に還元する事業を次々と立ち上げた。「タックルで倒されても何度でも起き上がる。ラグビーの根本はビジネスの世界でもまったく同じです」と語る笑顔には迷いがない。栄光のキャリアに固執せず、ゼロから学び直す謙虚さと圧倒的な行動力。これこそが、彼の衝撃的な転身劇を成功へと導いた最大の秘訣だった。