まず基本情報として、タイトルの読み方は「しゅんらい」です。春雷とは、立春を過ぎて最初に鳴る雷を指す春の季語。冬の寒さに眠っていた大地を震わせ、生き物たちを目覚めさせる「虫出しの雷」とも呼ばれます。静謐な冬の空気を一変させ、否応なく季節の更新を告げるこの気象現象こそが、楽曲全体の背骨となっています。
本作が収録されたアルバム『BOOTLEG』(2017年11月1日リリース)は、米津玄師がカルチャーアイコンとしての地位を決定づけた金字塔です。『打上花火』『灰色と青(+菅田将暉)』『LOSER』『ピースサイン』といった強力なキラーチューンがひしめく中で、7曲目に配置された『春雷』は、アルバムの重心をポップネスから艶やかな内省世界へと引き込む決定的な転換点となりました。
当時の音楽雑誌のインタビューにおいて米津本人は、「自分の中にある美しいもの、衝動的な情動を純度の高いポップスとして昇華させた」という趣旨の発言を残しています。自らのルーツであるオルタナティブ・ロックの鋭利さを保ちつつ、ブラックミュージックの官能的なグルーヴを日本のポップスに見事に落とし込んだ名曲といえます。