見当識障害は突発的にすべてが分からなくなるわけではありません。段階を追って少しずつ現実とのズレが広がっていきます。見当識障害初期症状をキャッチするために、各段階の特徴を押さえておきましょう。
第1段階:時間の見当識障害(初期)
最初に出現するのが「時間」の感覚のズレです。「今日は何曜日か」「今は何月か」「今年は何年か」が曖昧になります。真夏に厚手のセーターを着ようとしたり、深夜2時に「会社に行かなければ」と起きて支度を始めたりする行動は、時間の見当識低下による典型的なサインです。また、数分前に約束した予定を忘れて「まだ連絡が来ない」と何度も時計を見るなどの焦燥感も目立ち始めます。
第2段階:場所の見当識障害(中期)
時間の感覚が曖昧になると、次に「自分が今どこにいるのか」という空間認知の崩れが訪れます。数十年にわたって住み慣れた自宅周辺の道で迷子になる、スーパーへ買い物に出たきり帰り道が分からなくなる、さらには自宅の中にいながら「ここは自分の家ではない、帰らせてほしい」と訴える現象が起こります。この段階では、外に出てそのまま保護される「徘徊」のリスクが高まるため、見守り体制の強化が急務となります。
第3段階:人の見当識障害(後期)
症状がさらに進行すると、周囲の人間関係の認識に影響が及びます。遠い親戚や近所の人など疎遠な関係から認識が難しくなり、やがて毎日顔を合わせている実の息子や娘、配偶者の顔を見ても「どなたでしたかね?」と尋ねるようになります。また、娘を自分の母親と錯覚したり、配偶者を兄弟と思い込んだりする誤認も生じます。この段階は介護者にとって心理的ショックが最も大きい時期です。