バンドのソングライティングにおける絶対的な支柱である大森元貴。メディアインタビューや各種音楽誌で彼が明かしてきた創作への向き合い方を紐解くと、大森元貴の恋愛観と歌詞解釈には極めて一貫した「冷徹なリアリズム」が存在することが分かります。
彼が書くミセス 恋愛ソング 片思いの世界では、「恋する乙女の可愛い悩み」のような甘い意匠は早々に剥ぎ取られます。たとえば、相手の一挙手一投足に振り回され、連絡が来ないだけで世界の終わりのように感じてしまう精神状態を、自己防衛や承認欲求の暴走として描き出すのです。これは大森自身が10代の頃から自覚的であった「人間関係における境界線の難しさ」が色濃く反映されています。
かつて彼が語った「僕は人間が大好きだけれど、同時に人間が一番怖い」という趣旨の発言は、彼の手がける恋愛詩の骨格を成しています。誰かを深く愛するという行為は、自分自身の弱さや醜い執着を相手の前に晒す行為に他なりません。彼の歌詞が読者の胸をえぐるのは、「綺麗事としての愛」ではなく、「他者と関わることで生まれる必然的な痛み」を真正面から引き受けているからにほかなりません。