演劇界でどれだけ評価されても、それだけで食べていけるほど甘くはないのが役者の世界だ。小手は40代半ばで大ブレイクを果たす直前まで、コールセンターのアルバイトを続けていたことで知られている。しかも、ただのバイトではなく、クレーム対応などの高度な業務をこなす「頼れるベテラン」だったというから驚きだ。
この長い下積み時代について、本人は後に「電話越しに聞こえる多様な人間の感情や、理不尽な怒りに触れたことが、役作りの上で大きな財産になった」と語っている。売れない時代の苦悩や、社会の底辺でサバイブした経験が、彼の演じるキャラクターに奇妙なリアリティと、どこか憎めない人間味を与えているのだろう。