本作の骨太な脚本を手掛けたのは、日本のドラマ史において常にタブーと人間心理の暗部に切り込んできた脚本家・浅野妙子の作品経緯を辿ると、その凄みがより鮮明になります。浅野妙子は過去に『大奥』シリーズの重厚な人間ドラマをはじめ、2008年に社会現象を巻き起こした『ラスト・フレンズ』で性自認の揺らぎやDV、シェアハウスを通じた連帯を先駆的に描いた名手です。
当時のインタビューや関係者の証言を総合すると、浅野妙子は本作『プリズム』において、2000年代の劇的なメロドラマ手法を意図的に抑制し、「日常の機微と対話による心理的解放」へシフトさせました。事件や奇抜なトラブルで視聴者を煽るのではなく、庭の草木の手入れ、光の差し込む角度、何気ない食事の風景の中に、人間関係の本質を織り込むアプローチを採用したのです。
制作の契機となったのは、「固定された家族規範からこぼれ落ちてしまう人々が、互いを尊重しながら寄り添える新しい居場所を作れないか」という問題意識でした。植物が多種多様な生態系の中で共生するように、人間関係もまた婚姻届や異性愛主義という単一のモノカルチャーに縛られる必要はない――そうした脚本家の哲学が、全編を通じて静謐なトーンで貫かれています。