2023年秋に国立科学博物館の研究報告誌に発表された『赤坂御用地のトンボ相(学術論文』は、学会関係者に大きな驚きを与えた。長年にわたり赤坂御用地内の生態系を丹念に観察・記録し、絶滅危惧種を含む多数の種を確認したこの論文は、単なる趣味の領域を完全に逸脱している。
共同研究者とともに執筆されたこの論文に対し、一部からは推薦入試を有利に進めるための実績作りではないかという冷ややかな見方も上がった。しかし、生物分類学や生態学の専門家からは、継続的な定点観測データそのものの価値を認める声が圧倒的だ。
幼少期から生き物の生息環境に強い関心を寄せ、自らの足で泥にまみれながらデータを収集してきたプロセスそのものは、本物の研究者の資質を証明している。机上の勉強だけでは決して到達できない学術的アプローチが、そこには確かに刻まれている。