ムカデ被害に遭った際、皮膚科の臨床現場で診断の決定打となるのがムカデ咬み痕2つの特徴です。厳密に言えば、ムカデは針で「刺す」のではなく、頭部直下にある第1胴節の脚が鋭利な鉤爪へと変化した「毒肢(顎肢)」で皮膚を挟み込み、肉に食い込ませて毒を注入します。そのため、傷口を凝視すると、約2〜5ミリの間隔を空けて並ぶ2つの赤い点(刺入孔)が明瞭に確認できます。
受傷直後から数日間にわたる患部の変化は激しく、一般的な臨床記録に基づく「ムカデ刺され症状の経過写真」の典型的なタイムラインは以下のステップをたどります。
- 受傷直後〜30分:電撃的な激痛とともに咬まれた2点を取り囲むように発赤(紅斑)が広がり、直径数センチの範囲が白く盛り上がる膨疹(みみず腫れ)が現れます。
- 数時間後〜24時間:初期の鋭い痛みが鈍い拍動痛へと変化し、患部周辺の皮膚組織が広範囲に赤紫色の浮腫を起こします。毒素の侵入深度によっては小水疱(小さな水ぶくれ)や血豆が形成されます。
- 24時間〜48時間(ムカデ刺され腫れのピーク期間):免疫グロブリンとマクロファージの局所炎症反応が頂点に達し、腕や足全体が本来の太さの1.5倍近くまで硬く腫れ上がることが珍しくありません。この段階では激痛から「耐え難い掻痒感(猛烈なかゆみ)」へと主症状が移行します。
- 3日目以降〜数週間:徐々に腫れは引くものの、毒素による組織壊死やアレルギー反応の残滓として、皮下に硬い結節(しこり)が残存しやすくなります。
夜間の暗がりで被害に遭い加害虫を目視できなかった場合でも、患部中央に「近接する2つの咬み痕」が存在し、周辺がドーナツ状に熱を持って硬直していれば、ムカデ咬傷と断定して初動処置へ移るのが鉄則です。