三菱一号館美術館を語るうえで欠かせないのが、建築そのものが持つ圧倒的な文化的価値です。1894年に英国人建築家ジョサイア・コンドルによって設計された三菱の初代本社ビルを、解体時の部材や図面、明治期の製造技術を綿密に検証しながら2010年に忠実に復元しました。使用された赤レンガは約230万個に及び、目地の工法に至るまで当時の職人技が再現されています。
コレクションの中核を成すのは、19世紀末パリの歓楽街や人間模様を鋭いデッサン力で切り取ったトゥールーズ=ロートレックのグラフィック作品です。世界屈指の質と量を誇るロートレック作品群をはじめ、ル・フィガロ紙の挿絵、フェリックス・ヴァロットンの木版画など、親密な空間でこそ真価を発揮する小品・版画コレクションが充実しています。
展示室は、一般的なホワイトキューブ(白い無機質な大展示室)とは異なり、かつてのオフィス空間を思わせる小部屋が連なる構成です。暖炉の跡や木製窓枠など、落ち着いた邸宅のような佇まいの中で美術品と対峙できる点が、多くの鑑賞者から高く評価されています。
また、鑑賞後にはミュージアムショップ「Store 1894」へ立ち寄るのがおすすめです。展覧会ごとの限定図録はもちろん、赤レンガやコンドル建築の装飾モチーフを取り入れたオリジナルステーショナリー、上質なコラボレーション菓子など、ここでしか手に入らない洗練された限定グッズが揃っています。