舞台上では飄々とした脱力キャラを演じていた花紀京ですが、舞台裏での素顔は極めてストイックな演劇人でした。吉本新喜劇の座長として後輩の指導にあたる際も、無駄な怒声を浴びせることはなく、的確なアドバイスをボソリと授けるスタイルを貫きました。
間寛平や池乃めだか、桑原和男といった後輩座長・専属俳優たちも、花紀京から受けた薫陶の大きさを異口同音に語っています。「舞台でお客さんが笑っている間は絶対に次のセリフを言うな」「客が笑い疲れて息を吸い込んだ瞬間に次の言葉を落とせ」といった、感覚を言語化したような演技指導は、新喜劇の役者たちにとって何よりの財産となりました。
また、酒と麻雀をこよなく愛し、後輩たちに惜しみなく奢る豪快な一面を持ちながらも、舞台の出番直前には一人静かに集中を高めていたといいます。私生活におけるダンディズムと舞台上での徹底した役作り、そのギャップこそが多くの芸人たちを惹きつけてやまない理由でした。