丸亀製麺を運営する株式会社トリドールホールディングスの創業者、粟田貴也社長の経営哲学は、効率化を最優先する現代の外食トレンドと真っ向から対立する。中央集中型のセントラルキッチンで麺を一括製造して各店へ配送すれば、人件費も設備投資も大幅に削減できる。しかし、粟田氏が選んだのは、国内全店舗に製麺機を導入し、粉と水と塩のみから毎日店内で麺を打つという、極めて泥臭い手法だった。
オープンキッチンの中央に鎮座する大釜から立ち上る白い蒸気、茹で釜へ勢いよく投入される生麺、そして水槽で一気に締められる時の水音。これらの臨場感こそが、デジタル社会で希薄になった「手づくり・できたて」への渇望を刺激する。1日のイベントで店舗を訪れた客は、単に安いうどんを消費しているのではなく、厨房で繰り広げられる職人的なパフォーマンスの空気を同時に買い求めているのだ。