興味深いことに、古代中国の文献である『康熙字典』を開くと、現代の日本人が想像するサケとは全く異なる記述に行き当たる。中国の古い時代において、「鮭」という漢字はなんと「フグ」や「生魚の塩漬け」を指す文字であった。
中国大陸の河川や海に生息するフグ科の魚類を指していた漢字が、海を渡って日本へ伝わった際、日本人は自国の主要な水産資源であった川を遡上する魚にあてはめた。いわゆる「国訓」と呼ばれる現象だ。文字の意味が国や時代を超えて変化した典型例であり、漢字という表意文字が持つ柔軟性と、日本の風土に合わせた受容のプロセスを雄弁に語っている。