博多湾の潮汐データを読み解く第一歩は、公的機関が算出する推測値の性質を正しく把握することです。気象庁博多港潮汐推測値や海上保安庁海洋情報部が公開する数値は、月と太陽の引力のみを計算した「天文潮」に基づいています。博多港の平均潮位差は、大潮時で約1.8m〜2.0m、小潮時では0.6m〜0.8m前後に収まるのが通例です。
博多湾は海の中道と志賀島によって玄界灘から抱き込まれるような半閉鎖性内湾の構造を持っています。この地形特性により、湾口部から狭い水道を通って湾奥へと海水が流入するため、潮見表の満潮・干潮時刻と、実際の海水の動き(流速がゼロになる憩流時)には30分から45分前後のズレが発生します。この遅れを計算に入れずに釣行スケジュールを組むと、潮が動いているはずの時間帯にルアーが流されないという事態に陥ります。
海面は気圧低下(1hPa低下で海面が約1cm上昇)や季節風の影響をダイレクトに受けます。特に北西寄りの季節風が吹き込む秋・冬場には、湾奥に向かって海水が押し寄せ、タイドグラフ上の予測より実際の水面が15〜25cmほど高く推移する「気象潮」が頻繁に観測されます。足場が低い埠頭や護岸へエントリーする際は、推測値過信を排した現場判断が求められます。