折れ目のないピン札を用意し、いざ三つ折りにしようとした瞬間、手が止まる。基本中の基本にして最大の落とし穴が「お札の表裏」と「折り畳む順番」だ。紙幣の「表」とは肖像画が描かれている面を指す。まず、その肖像画が自分の正面を向くように置く。
手順はいたってシンプルだが、妥協は許されない。最初に左側を3分の1ほど内側へ折り、次に右側をかぶせるように重ねる。ここが肝心だ。右側が上にならなければならない。これを逆にすると、弔辞で使われる左前の折り方となり、新春の慶事に凶事を持ち込む最悪の無作法になってしまう。
さらに、三つ折りを終えた状態でポチ袋へ差し込む際、天地が逆さまにならないよう配慮する。袋の正面に対して、折ったお札の表面(左側の折り目を右側で覆った綺麗な面)が前を向き、紙幣の上部が袋の口側へ来るのが正しい配置だ。袋を開けて取り出した瞬間、肖像画の上半分が微笑みかけるように現れる。その滑らかな体験こそが、相手への敬意の結晶に他ならない。