この現象の代名詞とも言える印象的なキャラクターを生み出したのが、アメリカの漫画家チャールズ・M・シュルツだ。世界中で愛され続ける名作漫画『ピーナッツ(PEANUTS)』に登場するライナス・ヴァン・ペルトは、常に青い安心毛布を肌身離さず持ち歩き、周囲からどれほど揶揄されても頑なに手放そうとしない。彼が見せる独特の佇まいは、単なるコミックのユーモアにとどまらず、人間の心の奥底に眠る発達プロセスの真理を捉えている。
心理学や児童心理学の歴史において、この行動を理論的に体系化したのが英国の精神分析家ドナルド・ウィニコットだ。彼は、乳幼児が母親という絶対的な保護存在から離れて自立に向かう際、強い分離不安を和らげるために依存する特定の毛布やぬいぐるみを「移行対象(トランジショナル・オブジェクト)」と定義した。大人に見られる執着もまた、自立と不安の狭間で揺れる心が、自己防衛のメカニズムとしてこの「移行対象(トランジショナル・オブジェクト)」を再び召喚している状態と言える。