セルフネイラーの間で非常によくある誤解が、「使い終わった筆は除光液やエタノールでしっかり消毒・洗浄するべきだ」という思い込みです。現場のネイリストへの取材やネイル商材メーカーの開発データによると、筆の劣化や毛割れで持ち込まれる相談の約7割が、不適切な溶剤使用に起因しています。
アセトンで筆を洗うのがNGな理由は、アセトンが持つ極めて強力な脱脂作用と溶解力にあります。市販のジェルネイル用ブラシの多くは、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などの合成ナイロン毛、あるいはイタチやセーブルなどの高級獣毛で作られています。アセトンに浸けると、ナイロン毛は表面が溶けて縮れが生じ、獣毛の場合は毛のキューティクルが破壊されて油分が完全に奪い去られます。結果として、筆先がホウキのように広がり、二度と元のまとまりを取り戻せなくなってしまいます。
一方、無水エタノールと消毒用エタノールの違いを理解せずに筆を洗うケースも後を絶ちません。消毒用エタノールは濃度が約76.9〜81.4vol%で水分を約20%含んでおり、ジェルを溶かすどころか水分と混ざって白濁(白化現象)を起こす原因になります。純度99.5vol%以上の無水エタノールであれば顔料を素早く落とせますが、こちらも脱脂力が非常に強いため、日常的なジェルネイル筆の洗い方でエタノールを毎回使用すると、毛の柔軟性が失われて硬化しやすくなります。溶剤での洗浄は、濃いラメを取り除く際などの「緊急処置」にとどめるのが鉄則です。