香典の中袋(中包み)の表面中央に縦書きで金額を記す場合、正式な作法としては「金 壱萬圓」と大字(旧字体)を用いるのが原則です。日常的に使われている「一、二、三、十」といった単純な漢数字は、後から線を1本書き足すだけで「十」や「三」へと容易に改ざんできてしまう弱点を持っています。そのため、金銭のやり取りや公式文書において古くから数字の改ざんを防ぐ目的で「大字」が用いられてきた歴史があります。
「金 一万円」と書いたからといって受取を拒絶されたり、遺族から非難されたりする事態は現代の現場では考えにくいものの、故人への敬意と不祝儀の厳粛な儀礼を重んじる場においては、略式ではなく格式ある旧字体を用いるのが大人の嗜みとされています。
「壱」「萬」「圓」の大字(旧字体)書き順と美しいバランス
普段書き慣れていない旧字体は、バランスが崩れたり書き順を間違えたりしやすいものです。毛筆や筆ペンで書く際は、空間を広く取ることを意識すると端正な仕上がりになります。
「壱」(画数:7画)の書き方:
上部の「士(さむらい)」は、1画目を長く、3画目を短く書くのがポイントです。土(つち)と混同して1画目を短くしないよう注意してください。冠の下に「冖(わかんむり)」を薄く構え、その中に「匕(ひ)」を収めます。
「萬」(画数:12画または13画)の書き方:
草冠(くさかんむり)を幅広く取り、その下に「日」をやや平たく配置します。最下部の「禸(じゅう)」部分は、左右の払いを伸びやかにまとめると全体の重心が安定します。
「圓」(画数:13画)の書き方:
「囗(くにがまえ)」の中に「員」を美しく収める文字です。枠となる「囗」の内部にゆとりを持たせ、「口」と「貝」が詰まりすぎないよう余白を意識して配置します。「万」や「円」の略字を一部だけ混ぜて「壱万円」とする表記は中途半端な印象を与えるため、旧字体で統一して「壱萬圓」と記すのが通例です。