日本のメディアやYouTubeでは「単なる罰ゲーム用の激臭缶詰」として扱われがちですが、これには大きな文脈の脱落(コンテキストの欠如)があります。シュールストレミングは、もともと中世スウェーデンにおいて塩の貴重だった寒冷期を乗り切るために編み出された、歴史ある保存食文化の精華です。
本場スウェーデン北部では、缶を開けて中身をそのまま口に放り込むような食べ方は決してしません。発酵によって骨まで柔らかくなった身を丁寧に水洗いして余分な塩気とぬめりを落とし、内臓を取り除いてフィレ状にほぐします。そして、以下の伝統レシピに従って食卓に並べられます。
【伝統的な食べ方「トゥンブラッド・ルッレ」】
薄焼きのクリスプブレッド(トゥンブラッド)に無塩バターを厚めに塗り、茹でたジャガイモのスライス、細かく刻んだ赤玉ねぎ、トマト、サワークリーム(スメタナ)、フレッシュディルとともにシュールストレミングの身を少量載せて巻いて食します。
良質な乳脂肪分と玉ねぎの香味、ジャガイモの甘みがニシンの濃厚なアミノ酸(旨味成分)と調和したとき、アンチョビを凌駕する重厚な塩気と芳醇な旨味が口の中に広がります。地元の人々がアクアビット(強い蒸留酒)やビールとともに楽しむ夏の風物詩であり、適切な下処理とマリアージュを行えば、世界最高峰の発酵珍味としての真価を発揮します。