アニメ版において、視聴者のトラウマとして最も多くの証言が集まるのが、1991年に放送された「まる子 ノストラダムスの大予言を恐れる」の巻です。
1970年代から1990年代にかけて日本中を席巻した「1999年7の月、人類は滅亡する」という五島勉氏の著作に端を発する終末予言。この社会現象を、小学3年生のまる子の純粋かつ過敏な視点を通して描いたエピソードです。
放送当時、お茶の間の子供たちを震撼させたのは、突如として画面に挿入された劇画調のカタストロフィ描写でした。空が赤黒く染まり、雷鳴が轟く中で大地が割れ、人々が絶望に暮れるヴィジョンが、普段のほんわかしたアニメーションのタッチを完全に逸脱したタッチで執拗に描かれました。
SNSや当時の視聴者コミュニティには、以下のような生々しい回想が数多く残されています。
「日曜の夕飯時にこれを見て、1999年に自分は死ぬんだと確信して本気で泣きじゃくった」「まる子が『勉強してもどうせ死ぬのに』と自暴自棄になる姿が、幼少期の自分と完全にシンクロして眠れなくなった」
この回が傑作と称される所以は、子供が初めて直面する「不可避の死」や「世界の終わり」に対する実存的な不安を、ギャグでごまかさず真摯に描写した点にあります。最後は家族の他愛のない会話で日常へと着地するものの、観る者の胸に深い爪痕を残す構成は、脚本・演出の卓越した技術を物語っています。