日本の多くの神社には、神様を祀る中心的な建物である「本殿」が存在する。しかし、ここにはそれが存在しない。拝殿の奥に広がる御室山そのものが神の宿る神体山(かんなび)であり、社殿という建築物が登場する以前の古代信仰がそのまま息づいているからだ。
全国の神社を統括する神社本庁に属する数ある神社の中でも、本殿を持たない形態を守り続けているのは、奈良の大神神社、長野の諏訪大社(上社)、そして埼玉の金鑚神社など全国的にもごくわずかである。自然そのものを神として崇める原始的な神道の佇まいは、近代化された都市部では決して味わえない、強烈な霊気と静寂を参拝者に与えてくれる。