サカナクション陽炎の歌詞が暴く苦闘!曇天に笑う主題歌の深層真相

サカナクション陽炎の歌詞が暴く苦闘!曇天に笑う主題歌の深層真相

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サカナクションのキャリアにおいて、『陽炎』ほど産みの苦しみを味わった楽曲は他に類を見ません。発端は、2018年3月に全国公開された福士蒼汰主演の映画『曇天に笑う』(本広克行監督)の主題歌およびオープニング曲のオファーを受けたことでした。本広監督からの「映画のラストを圧倒的な高揚感で包み込んでほしい」という熱烈なラブコールを受け、楽曲の骨格自体は早い段階で構築されていたものの、山口一郎のペンは歌詞の段階で完全に停止することになります。

当時の報道各社や音楽メディアのインタビュー取材において、山口一郎は「タイアップとしての正解と、サカナクションとして鳴らすべき必然性の狭間で、どうしても言葉が出てこなくなってしまった」と赤裸々に吐露しています。映画の公開スケジュールは待ってくれません。制作陣がどれほど催促を重ねても、自身が100%納得できない言葉を世に出すことを山口一郎は断固として拒み続けました。

その結果、制作現場は前代未聞の決断を下します。2018年3月21日の映画劇場公開日を迎えた段階で流れたのは、歌詞が完全に完成していない「movie edit(劇中暫定バージョン)」でした。商業映画の主題歌として、完成版の納品が間に合わずに劇中専用テイクでお茶を濁すというのは、日本のエンターテインメント業界では極めて異例のスキャンダルに近い出来事でした。

山口一郎は後にラジオや公式インタビューで「本広監督や映画関係者の皆様には土下座しても足りないほどの迷惑をかけた。だが、嘘の言葉でお茶を濁して世に出すことだけは、ミュージシャンとしての死を意味していた」と述懐しています。この極限のプレッシャーと表現者としてのプライドの激突こそが、『陽炎』という名曲を唯一無二の存在へと押し上げる契機となったのです。

石川 優花
著者

石川 優花

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。