警察組織の中で、公安警察と刑事警察は対極ともいえる異なる行動原理で動いています。刑事警察(刑事部)の使命は、殺人や強盗、詐欺など「すでに発生した犯罪」の現場検証や証拠収集を行い、犯人を特定して送検することです。捜査の過程や成果は刑事訴訟法に基づき、法廷で公に明らかにされます。
対して公安警察(警備部・公安部)の目的は「国家の存立と社会秩序を揺るがす事態の未然防止」です。対象となるのはテロリズム、外国政府によるスパイ工作、極左・極右過激派の違法行為、重要インフラを標的としたサイバー攻撃など多岐にわたります。事件が起きてから動くのではなく、事案の発生を未然に防ぐため、捜査活動そのものを徹底的に秘匿するのが最大の特徴です。法廷で情報源や捜査手法が露見することを避けるため、あえて事件化を見送るケースすら存在します。
また、名称が似ているため混同されやすい組織に「公安調査庁(公調)」があります。公安調査庁は法務省の外局であり、破壊活動防止法や団体規制法に基づき、オウム真理教の後継団体などを対象に調査・観察処分を行う機関です。最大の違いは、公安調査庁の調査官には逮捕権や家宅捜索などの強制捜査権がない点です。公安警察は警察官であるため、令状に基づく強制捜査や現行犯逮捕の権限を行使できます。