真龍寺(しんりゅうじ)の歴史を紐解く上で欠かせないのが、曹洞宗大本山總持寺(神奈川県横浜市鶴見区)の直末寺としての系譜と、「道了尊(どうりょうそん)」にまつわる天狗信仰です。真龍寺はもともと、大本山總持寺の貫首を務めた独住第3世・西有穆山禅師(さいゆうぼくざんぜんじ)が開山となり、大正時代から昭和初期にかけての東京近郊の発展期に下北沢の地に開創されました。
寺院に祀られている「天狗」の正体は、小田原の大雄山最乗寺で知られる道了尊です。道了尊は師の寺院建立を怪力で助け、没後に天狗となって寺を守護したという伝説を持ち、火防(ひぶせ)・盗難除け・家内安全・商売繁盛の霊験あらたかな守護神として広く庶民に信仰されてきました。下北沢の商店街が発展していく過程で、地域の安寧と火災防止を祈願して真龍寺に分霊が勧請されたことが、現在の天狗まつりへと繋がる歴史の出発点となっています。
境内には、高さおよそ3メートル、幅約2メートルにも及ぶ「大天狗面」が安置されており、その堂々たる朱色の相貌と鋭い眼光は参拝者を圧倒します。単なる観光的なシンボルではなく、関東大震災や戦火からの復興を願い、下北沢の街と人々を災厄から守り続けてきた信仰の証として現在も大切に護持されています。