この裁判で最大の争点となったのは、「マンションの管理規約違反」と「隣人の退去に伴う賃料収入の喪失との間に相当因果関係があるか」という点でした。当該マンションの規約では、原則として小動物(体長約40cm以内等)のみが許可されており、体高のあるドーベルマンの飼育は明確な規約違反状態にありました。
2013年5月の東京地裁による一審判決では、管理規約違反を認めつつも、転居は被害者の主観的な恐怖心による面もあるとして、賠償額を約385万円(賃料2か月分相当など)にとどめました。しかし、双方が控訴して迎えた同年10月の東京高裁判決において、司法の判断は大きく厳罰化へ舵を切ることになります。
東京高裁は、「獰猛性も持ち合わせる大型犬を規約に反して飼育し続け、日常的に共用部を通行させていた過失は極めて重い」と指摘。被害者が同じマンションに住み続けることが耐え難くなったのは客観的に合理的であり、退去と事故の間に直接の因果関係を認めました。この結果、月額賃料約175万円の解約損害金や弁護士費用を含め、賠償額は一審の4倍以上となる約1725万円へと大幅に増額されたのです。