プッチ神父が実行した「天国へ行く方法」は、DIOが生前書き遺したノートに記されたプロトコルであり、36名以上の罪人の魂、信頼できる友、そして特定の場所と月齢を必要とする儀式でした。しかし、なぜ彼は全宇宙を巻き込む暴挙に人生のすべてを捧げたのでしょうか。その原動力は、若き日に直面した「自らの善意が招いた最悪の悲劇」に起因しています。
自身の生き別れの妹ペルラと、実の弟であったウェザー・リポート(ウェス・ブルーマリン)の許されざる恋を止めようとした結果、私立探偵の差別感情から弟はリンチに遭い、絶望した妹は投身自殺を遂げました。この逃れられない不条理に打ちのめされたプッチは、哲学的な決定論に救いを求めました。「人はなぜ生きるのか」「なぜ自分はこのような絶望に遭わねばならなかったのか」。その答えとして彼が辿り着いたのが、未来の確定による「心の平穏」だったのです。
一度宇宙を一巡し、未来に起きる出来事を魂の深層に記憶させた人類は、「何月何日に自分が事故に遭うか」「いつ誰と出会い、いつ死ぬのか」を無意識下で知ることになります。神父の論理では、未知の未来に怯えることこそが人間の不幸であり、あらかじめ訪れる破滅を知った上で受け入れることこそが「覚悟」であり、真の「天国」だと信じ込まれていました。心理学における「破局的予期不安の強制的排除」を宇宙規模で実行しようとした、極めて独善的で狂信的な救済願望であったと言えます。
なお、メイドインヘブン元ネタは、伝説的ロックバンド・クイーン(Queen)がフレディ・マーキュリーの死後にリリースした遺作アルバムおよびそのタイトル曲『Made in Heaven』です。連載当時の仮称「ステアウェイ・トゥ・ヘブン(天国への階段/レッド・ツェッペリン)」から変更されたこの名称には、天が定めた運命に身を委ね、あるがままの終焉を受け入れようとした神父の歪んだ祈りが鮮烈に反映されています。