絵本作家の鈴木のりたけ(本名:鈴木典丈)氏は1975年、静岡県浜松市生まれ。文系最難関の一角である一橋大学社会学部を卒業後、東海旅客鉄道株式会社(JR東海)へ総合職ではなく現場採用として入社したという、絵本作家としては極めて異例の経歴を持ちます。
JR東海時代は東海道新幹線の保線業務や駅業務、運転士修行など鉄道インフラの根幹を支える現場に配属され、徹底した安全確認と規律の世界に身を置いていました。当時のインタビューや手記において鈴木氏は、「現場の仕組みや構造の面白さに惹かれていた一方で、自らの手でゼロから何かを生み出したい衝動が常にあった」と述懐しています。約2年間の鉄道会社勤務を経てデザイン専門学校で学び直し、グラフィックデザイン事務所で広告デザインなどの実務経験を積んだ後にイラストレーター・絵本作家として独立を果たしました。
この「国立大での社会学的な視座」「鉄道現場で培われた構造への観察眼」「広告デザインで研ぎ澄まされた視覚伝達技術」の3要素の融合こそが、現在の鈴木のりたけ作品を唯一無二たらしめる基盤となっています。