歴代の暗殺事件における裁判資料や関係者の手記を精査すると、時代や政治思想を超えて浮かび上がる不気味な共通項が存在します。
第一に、「社会の急激な格差拡大と生活困窮」が常にテロの温床となっていた点です。大正末期から昭和初期の東北凶作と金融恐慌、あるいは平成から令和にかけての格差固定化や宗教問題をめぐる孤立は、既存の政治システムに対する深い不信と攻撃性を醸成しました。
第二に、「世論の共感と減刑運動」という危険な構造です。五・一五事件の裁判では、将校たちの「純粋な動機」に同情した一般市民から100万筆を超える減刑嘆願書が集まり、指を切り落として送る血書嘆願まで発生しました。この世論の寛容さがテロリストを英雄視させ、わずか4年後の二・二六事件というさらなる暴走を引き起こす直接的な呼び水となりました。法治国家において、動機の純粋さを理由に暴力を正当化することがいかに破滅的な結果をもたらすか、歴史は明確に警告しています。