2011年のニュースを振り返る際、表面的な報道と実態の間に大きな乖離が存在する2つの重要トピックがあります。「歴史的円高」と「スティーブ・ジョブズの死」です。
歴史的円高の背景:日本経済が強いから買われたという誤解
2011年10月31日、東京外国為替市場で円相場は一時1ドル=75円32銭を付け、戦後最高値を更新しました。ネット上や一部の言説では「大震災からの復興需要で日本経済への信認が高まり円が買われた」と解釈されることがありますが、これは明確な誤りです。
真の背景は、2008年のリーマン・ショック以降に米連邦準備制度理事会(FRB)が推し進めた大規模な量的緩和策(QE2)と、ギリシャを発端とする欧州債務危機により、ドルとユーロが猛烈に売られたことにあります。市場の投機マネーが「消去法的な安全資産」として、当時経常黒字国であった日本円に逃避した結果でした。この極端な円高は輸出企業に壊滅的な打撃を与え、パナソニックやソニーなどの大手電機メーカーが数千億円規模の最終赤字を計上する要因となり、国内工場の海外移転とサプライチェーンの空洞化を一気に加速させました。
スティーブ・ジョブズ死去の真相:突然の訃報に隠された闘病の実態
2011年10月5日、米アップルのカリフォルニア州クパチーノ本社から発信されたジョブズの訃報は、世界中に衝撃を与えました。「iPhone 4S」が発表されたわずか翌日の出来事であり、急死したかのように受け止められがちですが、実態は長年にわたる病魔との熾烈な闘いがありました。
公式伝記や医療関係者の報告によると、ジョブズが患っていたのは一般的な膵管がんではなく、希少な「膵神経内分泌腫瘍(NET)」でした。2003年の診断直後、彼は科学的な切除手術を拒否し、厳格な菜食主義や鍼治療、ハーブ療法といった代替医療に傾倒して9カ月間手術を遅らせました。後に本人が「最初から現代医学の手術を受けておくべきだった」と深い後悔を語った事実は広く知られています。妥協を許さない完璧主義と自己の信念への固執という、彼を希代のイノベーターたらしめた精神的特質そのものが、皮肉にも病の早期根治を遠ざける要因となったのです。