西表島の名を世界に轟かせた最大の功労者は、間違いなく1960年代に生息が確認された特別天然記念物「イリオモテヤマネコ」だ。そして、その奇跡的な発見の陰には一人のノンフィクション作家の執念が存在した。
直木賞作家であり動物文学の巨匠・戸川幸夫は、地元に伝わる「山に潜む謎の野猫」の噂を追って現地へ着目。1965年、ついに毛皮と頭骨を入手し、学会に新種発見をもたらす運命的な橋渡しを果たした。ベンガルヤマネコの亜種でありながら、数十万年前の大陸からの孤立を経て独自の進化を遂げたこの中型肉食獣は、わずか100頭前後しか生息していない。小さな島に大型~中型の哺乳類が生息し続けること自体が、生物学上の常識を覆す大事件だったのだ。戸川の情熱がなければ、科学的調査が大幅に遅れ、開発の波に飲み込まれていた可能性すら否定できない。