作品を象徴するトラウマ的名場面としてファンの記憶に刻まれているのが、『セーラームーンS』第110話および『セーラースターズ』第198話における「死亡シーン」です。なぜ彼女たちは、あそこまで凄惨に倒れなければならなかったのでしょうか。
『S』第110話では、自らの体内にあるピュアな心の結晶(タリスマン)を取り出せば死ぬと分かっていながら、みちるは銃撃を受け倒れ、はるかもまた自ら胸を撃ち抜いてタリスマンを取り出しました。「みちるのいない世界なんて、守ってもしょうがないじゃない」というメッセージを全身で体現した自己犠牲の極致でした。
さらに圧巻だったのが、『セーラースターズ』終盤の裏切りと最期です。銀河の支配者ギャラクシアに屈したふりをしてセーラーサターンとプルートのスターシードを奪い、悪に魂を売ったと見せかけてギャラクシアを奇襲する命がけの賭けに出ました。しかし攻撃は通用せず、腕輪を奪われたふたりは急速に消えゆく身体を抱えながら、冷たい床の上で互いに手を伸ばし合います。
「みちる…光が見える…」「あたたかいわね、はるか…」と指先を絡ませながら消滅していく幕切れは、善悪を超越して「ふたりだけの世界」を完結させた瞬間でした。過酷な戦いの果てに命を散らし、のちにセーラームーンの奇跡によって再生を果たすという結末に至るまでの道程は、アニメ史に残る美しき悲劇として今も語り継がれています。