シン・イェウンのキャリアを語る上で欠かせないのが、劇的な役柄の変遷と、それに伴う「演技力の覚醒」です。成均館大学校演技芸術学科に在学中の2018年、WEBドラマ『A-TEEN』の主人公ド・ハナ役に抜擢されると、トレードマークの黒髪ボブと飾らないクールな佇まいで10代女性の圧倒的支持を獲得。「ド・ハナ病」と呼ばれる模倣ブームを巻き起こし、瞬く間にスターダムへと駆け上がりました。
しかし、その華々しいスタートの裏で、彼女は深い苦悩の時期を経験しています。『おかえり〜ただいまのキスは屋根の上で〜』(2020年)や『場合の数』(2020年)など、地上波ドラマの主演に抜擢されたものの視聴率が低迷。バラエティ番組『カヨ広場』や当時のインタビューでは、「私のせいで作品が振るわないのではないか」とプレッシャーに涙を流す姿も見られました。このスランプ期に逃げ出さず、演技の基礎を徹底的に見つめ直したことが、後の大化けに繋がります。
転機となったのが、2022年から2023年にかけて配信されたNetflixシリーズ『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』です。彼女が演じたのは、主人公ムン・ドンウンを理不尽にいじめ抜く悪辣な高校生パク・ヨンジン(大人の役はイム・ジヨン)。屈託のない無垢な笑顔を浮かべながら、ヘアアイロンで他人の肌を焼き焦がす狂気的な怪演は、視聴者に強いトラウマと衝撃を与えました。制作発表会やメイキング映像では「撮影期間中は悪夢にうなされ、精神的にも極限まで追い詰められた」と明かしており、身を削る覚悟で挑んだ演技が世界的な大絶賛を呼び、第59回百想芸術大賞テレビ部門新人演技賞をはじめとする各賞を総なめにしました。
さらに2024年秋から2025年にかけて放送された『ジョンニョン:スター誕生』では、エリート国劇研究生ホ・ヨンソ役を担当。名門の重圧に苦しみながらも主人公ジョンニョン(キム・テリ)と魂をぶつけ合う複雑な内面を体現しました。1年以上の猛特訓を重ねて習得した伝統声楽「パンソリ」と古典舞踊の完成度は専門家を唸らせ、単なる若手女優の枠を超えた「本格派表現者」としての評価を決定づけています。