この力強い旗はどこで産声を上げたのか。起源には諸説あるものの、歴史の定説として広く語り継がれているのが、革命家グエン・フー・ティエン(Nguyễn Hữu Tiến)の手によるものという事実だ。
1940年、フランスの過酷な植民地支配に対抗して南部のコーチシナで勃発したナムキー蜂起。グエン・フー・ティエンは同志たちの士気を鼓舞すべく、自らの手でこの旗をデザインした。密林の湿気と暗闇のなか、粗末な布に染料を塗り重ねて掲げられたその旗は、直後に起きた過酷な弾圧と彼の処刑によって一時的に歴史の表舞台から姿を消す。
だが、火種は消えなかった。1945年、ベトナム共産党の主導で全土を揺るがした八月革命の渦中、金星紅旗は北部の山岳地帯からハノイのバーディン広場へと一気に駆け上がった。グエン・フー・ティエンが命を賭して描いたスケッチは、そのまま新生国家の誇りとして公認されることになった。