現在の蕎麦屋と出前の関係はどうなっているのか。蕎麦屋の出前の現在を検証すると、二極化が顕著に進んでいる実態が浮かび上がります。
SNSやネット上のコミュニティ(5ちゃんねるや知恵袋など)に寄せられる利用者の声を分析すると、「病気で寝込んだときに、近所の蕎麦屋が持ってきてくれた温かいうどんが忘れられない」「昔は玄関先に洗った器を出しておくと、夕方には綺麗になくなっているのが温かかった」という郷愁の声が数多く見られます。一方で、現在のギグワーク型配達に対しては「スープがこぼれていた」「配達員が建物の前で迷って麺が伸び切っていた」といった品質面への不満が散見されます。
取材した都内のある老舗蕎麦店の店主(72歳)は、現場の切実な胸中を次のように明かしてくれました。
「本音を言えば、今でも常連のお年寄りの家には届けてあげたいんです。足腰が悪くて店まで来られない人がたくさんいますから。でも、自分も膝を悪くしてバイクの乗り降りが辛い。バイトを雇えば時給1200円以上払っても人が来ない。器を回収に行ってもオートロックが開かないこともある。情けないけれど、店内のお客さんを守るだけで手一杯なんです」
自前で出前を継続できているのは、家族経営で複数の人手を確保できるごく一部の店舗か、配達エリアを半径500メートル前後に限定した地域密着店に限られています。