インターネット上や民間の伝承において、「犬の唾液には殺菌効果があるから、傷口を舐めさせれば早く治る」という言説が散見されますが、これは医学的に極めて危険な誤解です。現代の公衆衛生学において、この行為は重大な健康被害を引き起こす引き金とみなされています。
見逃せないのが、犬に舐められた時の感染症リスクです。犬の口腔内には「カプノサイトファーガ・カニモルサス」や「パスツレラ菌」などの細菌が高確率で常在しています。健康な成人の無傷な皮膚であれば過剰に恐れる必要はありませんが、微細な傷口や目・口の粘膜に唾液が付着した場合、重篤な人獣共通感染症を発症する恐れがあります。
国立感染症研究所などの公表資料によれば、カプノサイトファーガ感染症は稀であるものの、免疫力が低下している高齢者や基礎疾患(糖尿病、肝疾患など)を持つ人が発症すると、敗血症や多臓器不全を引き起こし、致命的な経過をたどる事例が報告されています。ペットを家族として深く愛することと、衛生学的な安全管理を混同してはなりません。特に乳幼児や高齢者のいる家庭では、顔面や口元への接触を厳格に制限するルール作りが不可欠です。