ネット上の掲示板やSNSでは、多指症に対して「恐ろしい奇病」「何かの前兆」といった前時代的なオカルト的偏見が語られることがありますが、文化人類学的な視点に立つと、世界各地で全く異なる捉え方がされてきました。
例えばインドの一部地域やヒンドゥー教の宗教観において、余剰の指は「神仏の加護を受けた特別な印」「富と繁栄をもたらす吉兆」として尊ばれるケースが多々あります。リティク・ローシャンが自身の手を誇りに思える背景には、こうした文化的な包摂性も寄与しています。
また、ブラジルには家族14人全員が手に6本の指を持つ「ダ・シルバ一家」が実在します。彼らは自らの手を誇りにしており、ワールドカップ開催時には「ブラジル代表が6度目の世界制覇(ヘキサ・カンピオオン)を果たすための幸運のシンボル」として世界中のメディアから温かい称賛を受けました。指が6本あることでピアノの演奏やキーパーとしての守備範囲が広がるなど、ポジティブな能力として謳歌しています。
現代のソーシャルメディア社会では、外見の均一性を求める旧来のルッキズムから脱却し、ボディ・ポジティビティ(身体のありのままを愛する姿勢)が急速に浸透しています。指の数や形状の違いを「治すべき欠陥」としてのみ捉えるのではなく、その人の個性やルーツとして尊重する潮流が確立されつつあります。