カフェ・ド・ランブルを語る上で欠かせないのが、日本の自家焙煎・ネルドリップ界の巨人であり、2018年に103歳で逝去した創業者・関口一郎(せきぐち いちろう)氏の存在です。早稲田大学理工学部で学んだエンジニア出身の関口氏は、珈琲を単なる感覚や勘ではなく、工学的・科学的な視点から突き詰めました。
関口氏が残した数々の発明と哲学は、現在も日本の喫茶文化における至宝とされています。
- 特注ネルフィルターの開発:布の織り目や毛羽立ち、縫製に至るまで研究を重ね、雑味を出さず旨味成分(コーヒーオイル)だけを抽出する一人用・多人数用のネルを独自開発。
- 鶴口ドリップポットの自作:湯の落ちるスピードと点滴抽出をミリ単位で制御できるよう、注ぎ口の形状を職人に特注した専用ポットを使用。
- 自作の小型焙煎機:豆の中心まで均一に熱を通すため、熱源やドラムの回転数にこだわった直火式焙煎機を自ら設計。
- 「水を出さない」ストイックな美学:珈琲のピュアな余韻を損なわせないため、席に着いても原則として水を出さず、珈琲そのものの味と向き合う空間を構築。
当時のインタビューや自著において、関口氏は「珈琲は豆の欠点を隠すのではなく、その豆が持つ本来の個性を余すところなく引き出すもの」と語っていました。その妥協なきクラフトマンシップは、甥である林不二彦氏をはじめとする熟練スタッフへと受け継がれ、創業から75年以上が経過した現在も変わらぬ情熱でカウンターから提供されています。