ポーランドボールの作中において、フランスボールはトラブルが起きた瞬間にポケットから白旗(White Flag)を取り出し、真っ先に降伏を宣言する役回りを頻繁に割り振られます。この過激なステレオタイプが定着した背景には、2つの決定的な歴史的転換点が存在します。
最大の歴史的要因は、1940年のナチス・ドイツによるフランス侵攻です。当時、欧州最強の陸軍大国と自他共に認めていたフランスが、ドイツ軍の電撃戦とアルデンヌの森を抜ける奇襲によって、わずか約6週間で電撃的に降伏へと追い込まれました。難攻不落と謳われた要塞線「マジノ線」があっけなく迂回され、首都パリが早期に無血開城された衝撃は、アングロサクソン諸国(特にイギリスやアメリカ)の集合的記憶に「戦わずして屈服した大国」という強烈なスティグマとして刻まれました。
もうひとつの決定打となったのが、2003年のイラク戦争を巡る米仏の外交衝突です。アメリカ主導の武力行使に対し、当時のシラク大統領とド・ヴィルパン外相は国連安保理で徹底した反対姿勢を貫きました。これに激怒した米国内の保守派メディアやタブロイド紙が、激しい反仏プロパガンダを展開。アニメ『ザ・シンプソンズ』の台詞だった「チーズを食べる降伏ザル(Cheese-eating surrender monkeys)」という罵倒句を大々的に拡散し、フレンチフライを「フリーダムフライ」に改名する騒動にまで発展しました。このとき英語圏のインターネット掲示板(4chanなど)で大流行した「フランスは常に降伏する」というネットミームが、2009年に誕生したポーランドボールの文脈へとそのまま引き継がれたのが実態です。
さらに皮肉な歴史的事実として、フランス復古王政期(1814〜1830年)の公式国旗が「純白の無地旗」であったという史実も、海外コミュニティで「白旗=フランスの国旗」という二重の意味を持ったジョークとして消費される一因となっています。