画仙紙の真価は、墨液が紙に触れた瞬間の化学・物理反応にあります。水と膠、そしてカーボンブラック(油煙や松煙)の微粒子から成る墨は、紙の繊維密度と吸水性によって全く異なる表情を見せます。
「生(き)」と「加工紙」の決定的な違い
画仙紙は表面処理の有無によって大きく2つに分かれます。
- 生紙(きがみ):漉き上げたまま滲み止め加工を施していない紙。墨を急激に吸い込み、豊かな滲みとダイナミックな擦れを生み出します。行草書の大作や濃淡を活かした水墨画には不可欠です。
- 加工紙(かこうし):生紙に礬水(どうさ:膠とミョウバンの混合液)を引いて滲みを止めたものや、胡粉を引いた「煮綛(にかせ)」、金銀泥を散らした装飾紙などがあります。墨が紙の深部へ潜らず表面にとどまるため、繊細な連綿線を描く仮名書道や、緻密な水墨着彩に適しています。
水墨画用画仙紙が持つ独自の要求性能
水墨画用画仙紙の特徴において最も重視されるのは、「墨の階調(五彩)」をどこまで描き分けられるかです。水墨画の世界では「墨に五色あり(焦・濃・重・淡・清)」と称されるように、わずかな水分調整で無限の濃淡を表現します。
品質の低い紙では、淡墨を重ねた際に先に描いた線が濁って消えてしまう「泣き」と呼ばれる現象が起きます。しかし、青壇皮を贅沢に使った本画仙では、最初に走らせた強い骨格線(基線)が乾いた後、上から淡墨のボカシを重ねても基線がくっきりと残り、紙の奥へと広がる無限の空間美を現出させることができます。